TOEIC SWの普及などに伴い、最近スピーキング力、発信力というものが英語学習で注目されていますが、とてもいい傾向だと思います。ようやく日本もここまで来たかという感じです。スピーキング力をつけるための勉強法は「英語勉強法2 スピーキング」で紹介しましたが、その先にはコミュニケーション力というものがあります。コミュニケーション力のない人がいくらシャドーウィングや音読などでスピーキング力をつけても、小手先の技術だけで、中身の伴った会話には発展していきません。そこで、ここではコミュニケーション力について扱っていきます。
英語勉強法7 コミュニケーション力1では質問について扱いましたが、会話を続けていく中で、当然相手からも質問されます。その時はきちんと答えましょう。
ただ、この答えるということもうまくできない人が多いですね。
例えばHow was your weekend?と訊かれた時に次の3つの答えではどれがいいでしょうか。
1、It was bad.
2、I saw a movie.
3、It was good.
これはよくないですね。
なぜか?
もちろん、状況によってはオーケーです。相手との関係がかなり親しく、話す時間が十分ある場合は、It was bad.と言ってもいいですね。ただしその理由も説明しなければなりません。そこまできちんと言えるんならこの返事でもオーケーです。
しかし、あまり親しくない人の場合、否定的な話はできれば避けたほうがいいです。しらけるからです。気分が盛り上がりません。
ここでもう一度、質問の目的を思い出してください。英語勉強法7 コミュニケーション力1で触れましたが、話題ふりの質問なんです。会話の口火を切りたいんです。ですからできるだけ楽しいネタを提供したほうがいいんです。
あと、理由を説明する時間がない時、言わないほうがいいです。誤解されるだけです。例えばレッスンとかで、生徒3人に先生がそれぞれHow was your weekend?と訊いたとします。短い答えを期待しているんです。すぐレッスンに移らなければならないので最初の挨拶にいつまでも時間をかけているわけにはいきません。
そこでIt was bad.と言われたら、Why? What happened?(どうしてですか? 何が起きたんですか?)と訊き返さないわけにはいかないですよね。
それだけ余計に時間がかかります。
そして、そういう時に限ってうまく説明できません。It was bad.というのは簡単ですが、理由を説明するにはもっと複雑な文型や語彙が必要になりますからね。
だったら最初から言わないほうがいいのです。
特に素晴らしい週末でなかった場合、It was good.とまでは言えないと思います。その場合でも、It was okay. I just stayed at home and took a good rest.(まあまあでした。家にいてのんびりしていました)などと言えばいいのです。
悪くはないです。
ただ文法的に間違っています。(笑)
How was your weekend?なので、
It was~で答えるのが普通です。I saw a movie.というのはWhat did you do on the weekend?という質問に対する答えです。
It was good. I saw a movie.だったらいいです。
これもいいですが、足りません。It was good.と答えた後で何をしたかまで言うといいです。
It was good. I went to a party.
It was good. I read a book.などですね。
「英語勉強法2 スピーキング」でも触れましたが、英語圏では一言で答えるのではなく、長めの文章で答えるように子供のころから教え込まれます。
It was good.だけだと無愛想に見えます。長めに答えることでフレンドリーな印象を与えるのです。
さて、ここで質問です。会話の目的は何ですか? こうしたやりとりは何のために行うのですか?
コミュニケーション力にはこれが重要なんです。何を意図するのか。言語的には、How was your weekend? It was good.で全く問題ありません。テストの答えとしても正解です。しかし、コミュニケーションという観点から見ると不十分なのです。目的を達成していないからです。
目的は相手との親交を深めることです。これは道を訊かれた時とは全然違います。道を訊かれた時は道を教えることが目的であり、それさえ達成できれば、その人と親交を深めなくてもかまわないわけです。しかし、これは知人の会話であり、仲良くなるという目的があるのです。
会話を弾ませること。まず会話を続けることです。沈黙していたら仲良くなれませんよね。だから何らかの話題を提供することが重要なんです。
It was good. I saw a movie.まで言うと、Oh, did you? What movie did you watch?(そうですか。何の映画を観たんですか?)と会話がつながり、発展していくんです。
つまり、卓球みたいなものですね。相手からの質問をきちんと相手に返す必要があります。球が返ってくれば相手はそれをまた打つことができます。
事実に忠実であろうとするために会話が続かない人がいます。
例えば、It was okay. I slept all day.(まあまあです。一日寝てました)と言う人。本当に寝ていた人の場合それが事実なんでしょうが、この答えは会話の目的を達成する上でどうですか?
逆に相手がそう答えたとします。それが相手から返ってきた球です。あなたはどうやってそれを打ち返しますか? 打ち返しにくいですよね。
事実にこだわらず、別のことを言えばいいんです。観たテレビの話、読んだ新聞の話、何でもいいから相手が打ち返しやすい球を返してあげる。
あるいは、相手に質問をし返す手もあります。
It was okay. I just stayed at home and didn't do anything special. How about you? How was your weekend?(まあまあです。うちにいて特に何もしなかったです。あなたはどうですか? 週末はどうでした?)
これならばきちんと球を打ち返していることになり、相手も打ち返しやすいです。
It was bad.という答えがよくない理由として盛り上がらない、しらけるということを挙げましたが、親交を深めることで重要なことのもうひとつがムードを高めること、つまり気分を盛り上げることです。
親しい友人の場合はかまわないと言いましたが、親しい友人との間にはすでに絆ができていて、何でも許されるんです。あなたが落ち込んでいても、怒りに満ち溢れていても、親友は受け止めてくれるんです。
しかし、会って間もない人や知人レベルの人はそういうわけにはいきません。仲良くなるためには、あなたと話している時に楽しく感じる必要がある。
特にアメリカ人などの場合、楽しい気分でいることに大きな価値を置いています。(イギリス人はシニカルな部分があるので少し違います)日本人にはつらいことを共有することで共感を築くことがありますが、アメリカ人にはそういう感覚はないので気をつけてください。
まずは笑顔。表情は重要ですね。ニコニコしているだけで何も言わなくても相手は気分をよくします。
できるだけ楽しいことを話す。パーティーに行った、温泉に行った、映画を観たなど何でもいいので楽しそうな活動について話すんです。
でも、そんなこと週末にしなかったら。
週末じゃなくてもいいんです。最近何か楽しいことをしたらそれをシェアすればいい。
It was okay. I didn't do anything special on the weekend. But last Thursday, I saw a movie.(まあまあです。週末には特に何もしませんでした。でも木曜日に映画を観ました)のような感じで言えばいいんです。
いつも週末は家でゴロゴロしている人、できるだけパーティーに行ったり、温泉に行ったり、スキーに行ったりしてください。ネタづくりのためにもそうしたほうがいいです。
あなたが本気で英語圏の人たちと友達になりたいと思っているのならぜひそうしてください。
週末は必ず話題になります。その時、あなたの答えがいつも家にいるだったら、ハッキリ言ってつまらない人だと思われてしまいます。アメリカ人は活動的な人を好むので、そういう人は人生に対して消極的で面白くない人だという印象を与えてしまうのです。
家にいて何が悪いんだとも思われるでしょう。もちろん、何も悪くありません。ただ、文化的な違いがあるので、彼らとコミュニケーションを取りたいのなら、そうした違いを理解しておくことが重要なのです。家にいてもいいんです。ただ、I just stayed at home and didn't do anything special.という答えを毎回言うのはやめたほうがいいということです。家でできる楽しいことをすればいいのです。読書は十分ネタになります。映画もそうです。スポーツ観戦もいいですね。食べた料理。買い物もいいですね。
そしてもちろん、英語の勉強に週末の大部分を費やしている人の場合、アマゾンプライムなどを観ることもできますよね。映画、海外ドラマ、CNNなどはすべてネタになります。
ネタを提供すればいいんだということで自分の話ばかりする人がいます。何も話さないよりは全然いいんですが、長々と自分の話だけされても相手は盛り上がりません。
卓球なので、行ったり来たりが重要です。相手に話す余裕も与えましょう。答えは短すぎず長すぎないのがいいのです。そして相手にも質問を返す。How about you? How was your weekend?
英語勉強法7 コミュニケーション力1では質問の重要性について話しましたが、質問をすることで相手に話させ、相手のムードを高める効果があるのです。
私の友人にIさんという人がいるんですが、彼は毎週のように自宅でパーティーを開いていました。彼はすごくまめな人で、次のパーティーの参考にするために毎回来た人たちに電話をして感想を訊くんです。「楽しかった」という人もいれば「イマイチだった」という人もいたそうです。理由を訊いてもあまりはっきりした答えは得られませんでした。そこで彼はパーティー中にみなを観察するようにしたのです。何回かやってみて、「楽しかった」と答えた人と「イマイチだった」と答えた人それぞれの共通項が見つかったのです。「楽しかった」と答えた人は自分の話を結構していて、反対に「イマイチだった」と答えた人は聞き役に回り、自分の話があまりできなかったようです。
なんだ。結局みんな自分の話をしたいんですね。(笑)
ということは、逆に考えると、相手の気分を盛り上げたい時は、とにかく相手に話させればいいんです。
もちろん、一番いいのが相手も自分も盛り上がれることで、適度なキャッチボールが必要です。ただ質問するだけや相手の話を聞くだけでなく、ところどころにコメントも入れるのです。
もちろん、これをするには場数が必要です。会話慣れしていないとスムーズなキャッチボールはできません。
そのためにも話し相手となる友達をつくる必要があり、そのためには、最初のやりとりで好印象を与えなければならないのです。